色に触れて、自分と向き合う時間。手軽に始めるアート体験
日々の小さなざわつきに、色との対話を
子育てがひと段落し、ご自身の時間が増えた方もいらっしゃるかもしれません。ふと立ち止まった時、これまで忙しさに紛れていた胸の内の小さなざわつきや、漠然とした不安を感じることはありませんでしょうか。何か新しいことを始めて気分転換したいけれど、特別なスキルが必要なものにはハードルを感じてしまう。そんな風に思われている方もいらっしゃるかもしれません。
このサイトでは、アートを通してご自身の内面と向き合う方法や、ワークショップの体験談をご紹介しています。絵を描いたり、何かを作ったりすることに「苦手意識がある」と感じていらっしゃる方にも、きっと気軽に始めていただけるアートとの関わり方があります。
今回は、身近にある「色」に触れることから始める、心との向き合い方についてお話ししたいと思います。
色は、心の声なき言葉かもしれません
私たちの周りには様々な色があふれています。そして、それぞれの色が持つ雰囲気や印象は、知らず知らずのうちに私たちの心に影響を与えています。例えば、晴れた日の青空を見ると気持ちが晴れやかになったり、温かいオレンジ色を見るとほっとしたり。色は言葉を持たない分、より感覚的に心に響いてくるものかもしれません。
そして、私たちが「好きだな」と感じる色や、「なぜか気になる」という色は、その時の心の状態や内面の声を表していることがあると言われています。色を選ぶというシンプルな行為も、実はご自身の心を知る手がかりになるのです。
手軽に始める「色を使ったアート」
では、具体的にどのように色と触れ合えば、内面と向き合う時間になるのでしょうか。難しく考える必要はありません。特別な技術は一切いらない、とても簡単な方法から始めてみましょう。
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今日の気分を色で表してみる 手元にある色鉛筆やクレヨン、パステル、絵の具など、どんな画材でも構いません。何も考えず、「今の気分は何色かな?」と感じる色をいくつか選んでみてください。そして、紙の上に自由に色を塗ったり、描いたりしてみます。形にならなくても大丈夫です。ただ、感じるままに色を置いていく時間です。
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好きな色を集めてみる 雑誌の切り抜き、布切れ、お菓子の包み紙、写真など、身の回りにあるものから「惹かれる色」「気になる色」を集めてみるのも楽しいでしょう。並べて眺めているうちに、今の自分がどんな色に囲まれていると心地良いか、どんな色を求めているのか、何か気づきがあるかもしれません。
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「大人の塗り絵」を楽しんでみる 最近は繊細で美しいデザインの「大人の塗り絵」がたくさんあります。絵を描くのは苦手でも、塗るだけなら気軽に始められます。色を選び、枠の中を丁寧に塗っていく作業に集中することで、心が落ち着き、瞑想に近い効果を感じられる方もいらっしゃいます。完成させることよりも、色を選ぶ時間や、黙々と手を動かすプロセスを楽しんでみてください。
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パステルを指でぼかすアート 柔らかいパステルチョークを削り、コットンや指先で紙に塗り広げていくアートは、絵を描くというよりは色と遊ぶような感覚です。色が混ざり合い、ふんわりとした優しいグラデーションが生まれる様子は、見ているだけでも心が安らぎます。決まった形を描く必要はなく、ただ色の重なりや広がりを楽しむことで、無心になれる時間を持てます。
色との対話から生まれる気づき
これらの簡単なアート活動を通して、ご自身の内面と向き合うためのヒントをいくつかご紹介します。
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選んだ色に「なぜ?」と問いかける なぜ今日の気分はこの色だと感じたのだろう? なぜこの色に惹かれるのだろう? 選んだ色について、ご自身にそっと問いかけてみてください。頭で考えるのではなく、心に浮かんでくる感覚に耳を傾けてみましょう。
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塗る過程で変化する心に気づく 色を塗ったり、色を集めたりしているうちに、最初の気分から変化があるかもしれません。集中することで心が落ち着いたり、選んだ色によって気持ちが明るくなったり。その時々に変化する心の動きを静かに感じてみてください。
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完成した絵や色を見て感じる もし何か形になったものがあれば、それを眺めてみましょう。客観的に見ることで、今の自分の状態を再認識できることがあります。「今日はこんな色を使いたかったんだな」「意外とこの色が好きだったんだな」など、新しい発見があるかもしれません。
体験者の声から見えてくる変化
実際に色を使ったアートを体験された方からは、このような声が聞かれます。
- 「最初はただ色を塗っているだけだと思っていたけれど、どの色を選ぼうか考えているうちに、普段意識しない気持ちに気づくことがありました」
- 「無心でパステルを指で伸ばしている時間が、何よりのリフレッシュになりました。終わった後は、頭の中がすっきりした感じがします」
- 「完成した絵は上手ではありませんが、自分が選んだ色たちが並んでいるのを見たら、なんだか自分自身を受け入れられたような温かい気持ちになりました」
- 「落ち込んでいる時に好きな色を塗っていたら、少しずつ心が明るくなっていくのを感じました。色の力ってすごいですね」
特別なスキルは必要ありません。ただ色に触れる時間を持ち、その中で感じること、気づくことに寄り添ってみる。それだけで、心が少しずつ軽くなったり、自分自身のことをより深く理解するきっかけになったりするのです。
まずは一色から、始めてみませんか
日々の生活の中で、ほんの少しの時間でも構いません。お気に入りの一色を見つめることからでも良いのです。色鉛筆一本と紙切れ一枚で始められます。
難しく考えず、「面白そうだな」と感じたら、ぜひ気軽に色を使ったアートを試してみてください。色が持つ温かい力と、ご自身の内面の声に耳を傾ける静かな時間が、きっとあなたの心に安らぎと彩りをもたらしてくれることでしょう。
自分自身と向き合うアートの旅を、色と共に始めてみませんか。